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判例編17:公正証書遺言の口述

太郎さんは、大介さんを認知する遺言をしようと、花子さんに頼んで公証役場と打ち合わせをしてもらいました。公証人は太郎さんが入院中の病院に訪問し、公正証書遺言を作成しました。ところが、太郎さんは公証人との面談時、すでにこん睡状態でしたが、公証人は太郎さんに遺言の内容を確認し、太郎さんは頷いただけでした。太郎さんの相続人である一郎さんは、この公正証書は遺言者の口述を筆記したものではないので、遺言は無効だと主張しました。

 

公正証書遺言の作成方法は、民法969条にあり、①証人2人以上の立会、②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口述すること、③公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させること、④遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し印を押すこと、⑤公証人が署名印をおすこと、とあります。

 

今回の場合、口述をしたとは言えないこと、遺言者の判断能力が低下していたこと、公証人の質問を理解していたか疑わしいこと、などから裁判所はこの遺言を無効と判断しました。

 

最近、遺言を作成する方が多くなってきましたが、認知症や判断能力の低い方の遺言は、公証人にも慎重になっており、公証役場によっては、医師に判断能力の有無の診断書を求めるところもあります。遺言者の相続人などが公証役場と打ち合わせをして、遺言当日、公証人が遺言者と会う場合、相続人が勝手に遺言の内容を決めている可能性もあるので、遺言者は遺言の趣旨をしっかり理解しているかどうか、公証人は色々と質問したりお話を聞いたりするようです。

 

遺言の作成は、ご自身が元気なうちにしておくことが、後々のトラブルを回避することになりますので、遺言を考えている方は、早めに準備を進めるとよいですね。

 

当事務所でも遺言の書き方のアドバイスや公正証書遺言のための公証役場との調整などもさせていただいておりますので、遠慮なくご相談くださいませ。

 

 

今回の参照判例:最2判昭和51年1月16日家月28巻7号25項